カタログ発刊しました

e431道場
いまさら聞けない!

ブースター(増幅器)の技術知識

1.ブースターの役割

ブースターは、入力された電波を大きく増幅しますが、電波の品質は改善しません。
アンテナ直下なら受信できますがリビングまでケーブルを引っ張ると映らない、また、2台目、3台目のテレビや録画機へ分配すると映らなくなった、などケーブルの配線や分配等の伝送損失が原因の場合には効果を発揮しますが、電波の品質が悪くて映らない時は効果は期待できず、逆効果になる場合もあります。


e431オリジナルブースター
TAM-U45(UHF用)
TAM-UBC45(UHF・BS・CS用)

2.テレビ受信機に必要な電波について

テレビ受像機に必要な電波の目安は、次の通りです。この範囲ならテレビの画質に差は生じません。

地上デジタル放送
テレビ受信機入力レベル:46~89dBµV、MER:25dB以上
BS/CS放送
テレビ受信機入力レベル:50~81dBµV、CN比:17dB以上(4K/8KはCN比18dB以上)

※受信機入力レベルは測定器の計測値で、テレビ受像機に表示されるアンテナ方向調整用の「アンテナ受信の状況」の数字ではありません。
出典元:JEITA資料

MEMO 1
デジタル放送は、受信データに基づいてテレビ受像機が映像を作るため、最低の電波が供給されていれば、それ以上に値が良くても画質に差は生じません。
必要以上に数字を追い求めても受信のマージンは増えますが画質は同じです。

MEMO 2
デジタル放送は、昔のアナログテレビのように受信品位が直接テレビの映像に現れる(砂嵐やゴーストと呼ばれる二重映りなど)ことは起こりません。
デジタル放送は、ぎりぎりの受信状態でマージンが無くても綺麗に映るため、強風や雪などの受信状況の変化に対応できないこともあります。アンテナ設置時の課題かと思われますが、ご注意ください。
できればチェッカーで受信品位を確認されることを推奨します。

3.ブースターの性能について

1 利得:単位【dB】

電波を大きくする機能で、ブースターに加えた入力信号と出力信号との比を、対数:ベル(B)で表します。ただし、ベルはテレビ受信では単位として大きすぎるため、その10分の1の単位:デシベル(dB)で表記します。
何倍かという真数で扱うと数字が大きくなりますので、対数表記が用いられます。
TAM-U45は利得45dBですので、入力信号を約30,000倍に増幅して出力するブースターとなります。

MEMO
入力に10の電波量を加えると、出力に1000の電波量が出力されるブースターなら入力が100倍に増幅されますので、利得は20dBとなります。
利得 = 10×LOG(出力÷入力)= 10×log(1000÷10) = 20dB

2 定格出力:単位【dBµV】

ブースターが通常性能で働く時の最大出力の値で、この値までの出力で運用するようにしてください。定格出力は伝送するチャンネル数とも関係しますので波数と一緒に表示されます。
この値を超えると歪特性が悪化して信号品質が低下し、テレビの受信不良に繋がります。 
TAM-U45は、地デジ:9チャンネル、定格出力:104dBµVの製品です。
ケーブルテレビの70chもあるような電波は流せませんのでご注意ください。

MEMO
定格出力から利得を引くと「入力」となりますが、ブースターが本来の性能を発揮できる範囲を入力に置きかえて「適正入力」として、のぞましい運用レベルとして表記する場合もあります。
増幅器は定格出力を超えて使用しますと増幅器内部の歪み成分が増え、信号品質が大きく劣化して受信不良になることもありますので、適正入力を守り、出力が定格値を超過しないようご注意ください。
この調整には、スライド式の入力レベル調整スイッチや利得調整ボリュームを操作しますが、それでもまだ入力オーバーとなる場合には、外付けのアッテネータで調整いたします。

3 歪特性、CN特性:単位【dB】

ブースターの出力には入力信号のほかにブースター内部で発生した歪み成分も加わって出力されます。
この信号と歪み成分(ノイズも含む)との差をCN特性と呼び、この値が大きいほど信号の品質が良い特性となります。歪みの発生は防ぐことができませんが、ブースターを1台だけ定格出力範囲内で単体運用しているときは、実用上歪み特性は無視できます。
複数のブースターを継続接続する場合は歪み成分も増幅されますので、2台接続なら-3dB、3台接続なら-5dBだけ各ブースターの出力レベルを定格値より下げて使用する必要があります。

4 雑音指数、NF特性:単位【dB】

ブースターは常に内部で雑音(ノイズ)が発生しています。この度合いを雑音指数(NF)と呼び、電子回路である以上ノイズの発生は避けることができません。
この数値が小さいほど、より弱い電波の増幅に適します。JEITAでは雑音指数が3dB以下のUHFブースターを低雑音型と定義されており、TAM-U45はNF1.5dB(周波数帯による)で、この低雑音型に属します。

5 BS・CS帯域ブースターのチルト特性

テレビ電波は4K8K信号のような高い周波数になるほど伝送損失が大きくなるため、ブースターの利得を1.0GHzと3.2GHzで差をつけ、伝送路で発生するチャンネル間のレベル差拡大を防止する措置が取られます。
この傾きを持たせた利得の特性をチルト特性と呼びます。
TAM-UBC45では、BS・CS帯域で1.0GHz:利得27dB、3.2GHz:利得35dBと8dBのチルト特性を設けております。
(UHF帯域は、周波数幅も狭くレベル差も大きく生じないため、チルトを持たせないフラットな利得特性が一般的です)

TAM-UBC45のBS・CS帯域の利得チルト特性

4.ブースターの種類

ブースターは、用途に応じて様々な種類があります。

  • 受信設備の規模によって、戸建住宅向けの家庭用やマンション/商業施設等で使われる共同受信用
  • 使用周波数によって、UHF用やBS/CS用、両用モデル、CATV用
  • 使用用途によって、弱電界受信用プリアンプや電波補償用ラインブースター

目的に応じて、最適の製品を選択してください。

家庭用ブースターは1台で戸建住宅全体をカバーできる電波量が確保できるよう設計されています。本体と電源部を分離したセパレート構造が多く、付属の電源部からDC15Vを同軸ケーブルへ電源重畳して使用します。
共聴用ブースターは連続使用を想定してAC100Vで動作する電源部を内部に持っています。定格出力が大きいため放熱を考慮した板金製ケースに収められている製品が主流です。
CATV用ブースターは伝送波数が多いという特徴があります。テレビ放送の周波数とは異なった帯域を使用したり、ケーブルインターネットにて双方向機能が求められるケースもあり、戸建住宅用や共同受信用それぞれ専用のCATV向け製品がラインアップされています。

ここでは、戸建住宅での受信を念頭に置いて家庭用ブースター、ラインブースターをご説明いたします。
ラインブースターはもう少しレベルを持ちあげたい場合などに、入力1本、出力1本で、伝送路の途中で使用します。
プリアンプ(前置増幅器)はアンテナからブースターまでの距離が長く、ブースター入力が低すぎる場合などに、アンテナ直下に使用しますが、2台のブースターのレベル配分の検討が必要になります。
ブースターは目的に応じた製品をご選択ください。

5.ブースターの使用例
 レベルダイアの考え方

下図のシステムを例として、テレビ受信機にどれくらいの信号が供給されるかのご説明をいたします。

1 システム例

2 レベル計算表 

【3224MHz時の減衰量で計算】

機器 レベル
BS・CSアンテナ出力 70 dBµV
同軸ケーブル損失(5m) 2.3 dB
ブースター入力 67.7 dBµV
ブースター出力 101.0 dBµV
同軸ケーブル損失(10m) 4.6 dB
6分配器入力 96.4 dBµV
6分配器 分配損失 17.8 dB
6分配器出力 78.6 dBµV
同軸ケーブル損失(23m) 10.6 dB
壁面端子 0.5 dB
壁面端子出力 67.5 dBµV
同軸ケーブル損失(2m) 0.9 dB
ブースタ電源部 2.5 dB
同軸ケーブル損失(3m) 1.4 dB
分波器 入力2m/出力0.5m 3 dB
テレビ受信機入力 59.7 dBµV
≧48dBµV OK

3 損失データ

【3224MHz時の減衰量で計算】

機器 e431型番 3224MHz時の値
同軸ケーブル:S-5C-FB伝送損失 M5C-FBA 0.458 dB/m
ブースター:定格出力 TAM-UBC45 101.0 dBµV
ブースタ電源部:挿入損失 TPS-01 2.5 dB
6分配器 分配損失 TSP-6DM 17.8 dB
壁面テレビ端子:挿入損失 TCU-KL 1.0 dB
分波器(入力2m):分波損失 TBP-EM/W 3.0 dB

4 レベルダイアグラム

6.ブースター使用時の注意点
(施工上の注意)

1 ブースターはアンテナ直下に設置

CN比を劣化させないため、アンテナの直近にブースターを設置するのがベストですが、増幅した電波が再びアンテナ部へ回り込まないように、UHFアンテナとブースター本体とは1m以上の距離を空けて設置してください。

2 コネクタ加工

コネクタ加工は同軸ケーブルのシールド効果を落さないよう、確実に組み立てをしてください。
コネクタ不良は電波漏洩や飛込み障害の原因となります。

3 ブースターの出力側ケーブルと
入力側ケーブルを一緒に束ねない

出力ケーブルには大きく増幅された信号が流れますので、出力ケーブルを入力ケーブルと一緒に沿わせたり束ねたりすると、電磁誘導で発振症状を起こす可能性がありますので、充分に注意して施工ください。入力ケーブルと出力ケーブルは距離を取り、一緒に束ねないように配線してください。

MEMO
ブースターは非常に高い増幅度を持っていますので、出力側から入力側へ何らかの信号の帰還があると、閉ループとなり発振症状を引き起こします。
この状態になると、他の設備へも大きな障害を起こす事になりますので、充分に注意して施工ください。

4 通電の確認

ブースターは専用電源部からの重畳電源(DC15V)で動作します。TAM-U45とTAM-UBC45付属の電源部TPS-01は電流容量600mAで充分な供給能力がありますが、ブースター本体と100m以上距離が離れたり、配線経路の隙間ケーブルや分岐・分配器など機器の挿入等で電圧降下が大きい場合には、ブースターの受電電圧に注意してください。また通電経路となる分岐・分配器には、通電仕様の製品を使用してください。壁面端子には端子側から通電できる製品もありますのでご利用ください。

通電仕様の分岐・分配器製品

TSP-4DM / TWS-2M など

端子側から通電できる壁面端子製品

TCU-KL / TCU-7-7LK など

5 定格出力超過の対策

ブースター出力が定格値を超える場合には、ブースター内蔵のレベル調整SW(内部アッテネータ)を使用して定格出力内に納めてください。レベル調整SWを使用しても出力が超過する場合には、ブースターの利得調整ボリュームを絞り調整します。
それでもまだ出力超過の場合には、ブースター入力に外付の外部アッテネータを用いて調整します。TAM-U45は、3段階可変のSW(0,-10,-15dB)と、利得調整ボリューム(0~-10dB)がありますので、最大に使用すれば45dB⇒20dBまで利得を絞ることができます。


※その他の受信トラブルやお困り事があれば、取扱説明書や弊社HP「お役立ち情報」を参照ください。
それでも解決しない場合は、
カスタマーセンター」までご相談下さい。技術者が対応させて頂きます。


e431のイイブースター 特設サイトはこちら

e431 オリジナルブースター 開発ストーリーはこちら