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テレビ受信用アンテナの基礎知識!

地上デジタル放送(UHF)の電波の伝わり方と見通し距離について

どうして遠方のテレビ放送は受信できないの?

UHF電波は光と同じように直進し、伝搬距離に応じて減衰します。
地球は真円ではありませんが丸い球体ですので、見通せる距離≒伝搬する距離には限界があります。
受信可能範囲は送信所からの見通し距離となりますが、途中に建物や山等で電波が遮蔽されますと受信不良となります。
電波伝搬にはその他にも反射や屈折など電波の特性に関する条件が関係しますが、見通し距離の考え方は上記の通りです。
具体的な数字例として、テレビ電波の送信地上高を500mと仮定しますと、この時の見通し距離は約92kmとなります

実際には受信側アンテナ地上高や遮蔽物も関係し単純ではありませんが、物理的な見通し距離の目安(限界)は、この程度となります。

見通し距離=4.12×(√送信点高m+√受信点高m)km
●

地上デジタル放送局のサービスエリア

放送局にはサービスエリアがあり、それを超える受信は難しい

送信所から送信された電波は山などの地形や海面の反射などを経て伝搬しますが、この電波の強さは電界強度(dBµV/m)で表され送信所直近の強電界地区(概ね80dBµV/m)、中電界地区(概ね70dBµV/m) 、弱電界地区(概ね60dBµV/m)に区分されます。
この電界強度:60dBµV/mの区域までが放送局のサービスエリアと定義されています。※1
八木式アンテナを適用しますと、強電界地区は8素子や窓際等では室内アンテナでも受信可能で、中電界強度のエリアは14素子、弱電界地区はそれよりさらに大きい20素子などのアンテナとされています。※2
もちろんワンランク上のアンテナを用いてもトラブルは生じません。

60dBµV/mに満たない県域外放送などをサービスエリア越えで受信するには、20素子以上やスタック式アンテナなどの高性能なアンテナが必要となりますが、それでも安定的に受信することは難しく、アンテナの設置場所などを選びます。

※1
放送エリアの目安は、一般社団法人 放送サービス高度化推進協会(A-PAB)のホームページで確認が出来ます。
※2
ご注意:電界強度(単位:dBµV/m)は、電波の受信レベル(単位:dBµV)と同一ではありません。
●

電界強度とアンテナ出力の関係

動作利得11dBの20素子アンテナで受信チャンネル34chを弱電地区:60dBµV/mで用いますと、同軸ケーブルの損失を1dBとした場合、受信レベルは49dBµVとなります。
計算式:
受信機入力端子電圧=電界強度+20logλ/π+アンテナ利得+ケーブル損-6(終端値換算値)=60-20log(300/600)/π+11-1.0-6=49.04dBµV

これでわかりますように、サービスエリアは20素子アンテナを用いても受信点に必要なアンテナ出力49dBµVが得られるギリギリの範囲となります。

八木式アンテナの原理

アンテナの大きさは使用するチャンネルで決まる

発明者の名が付いたアンテナで、3素子を例にすると放射器からの電波を1/4波長離れた距離に1/2波長(半波長)よりやや長いエレメントを置くと電波は反射され、4/1波長離れた距離に1/2波長よりやや短いエレメントを置くと、電波はより引き寄せられる、という原理によるものです。電球で例えると、電球(放射器)から発行する光(電波)をより前面へ遠く飛ばすため、電球の後ろに反射鏡(反射器)を置き、前方にレンズ(導波器)を置いて集光するイメージです。
ですのでアンテナの大きさは受信できる周波数に大きく関係します。
地デジ受信用では、反射器を複数組み合わせたコーナレフレクタ式として、導波器を複数重ねた14素子程度のものが多く用いられます。

電波を光に置きかえた例

電波を光に置きかえた例

動作原理

動作原理

構成

構成

アンテナの大きさと波長

波長λ=C/周波数=300/周波数MHz (m)
ここでC=光速
例 13ch(473MHz)なら1/2波長:31.7cm

UHFの八木式アンテナの放射器のエレメントの長さ(大きさ)はこの程度となります。

ご注意:壁面に取付けられる平面アンテナやBS/CSのパラボラアンテナは上記の理論ではございません

その他の地デジ用アンテナについて

最近はデザインアンテナと呼ばれるアンテナが主流!

上記の八木式アンテナ理論とは異なる動作原理による地デジ用アンテナが各メーカーから発売され、昨今の住宅にマッチするようにラインナップされております。各メーカーとも八木式アンテナの利得と互換が示されておりますので、受信地域に合わせた利得のアンテナを選択下さい。
ただしこれらのデザインアンテナは、大屋根の上ではなく、壁面等に取り付けられる事が多いので、電波到来方向が見通しで建物に遮蔽されていないか、特に家屋が密集する地区では注意ください。

  • マスプロ電工 ユニコーン
  • 日本アンテナ 薄型UHFアンテナ
  • DXアンテナ マイクロアトリックス アレー式アンテナ

アンテナの主な基本性能

アンテナの規格の見方

動作利得(dB)

アンテナの利得を表す性能で、基準となるアンテナ(半波長ダイポールアンテナ)に比べてどれだけ電波を捕まえられるかを表します。
大きな数字になるほど、より高感度でより弱い電波を受信する事が出来ます。アンテナは受信する周波数で特性が変わりますので動作利得も受信チャンネルで異なります。

半波長ダイポールアンテナと5素子アンテナの比較
この場合のアンテナの利得:Gは

利得6dBとなります。

電力半値幅(度)

メインビームの利得が半分になるところの角度を示します。この角度が小さくビームが細くなる程、よりシャープな指向性となり、希望放送局以外の電波を受けにくくなります。受信周波数で値は変わり14素子のUHFアンテナでは60°弱から30°強ですが、BS/CSパラボラアンテナでは全周波数帯域で5°程度(JEITAで指向特性が定められています)と非常に狭く、よりシャープに衛星からの電波を捕まえます。
電力半値幅が狭く指向特性がシャープな分、BS/CSパラボラアンテナの方向調整は難しくなります。

電力半値幅の図

前後比(dB)

アンテナのメインビームに対し、後ろ方向からの電波をどれだけカットするかの性能となります。値が大きいほど、より後ろからの電波を遮断し、受けにくくなります。

前後比の図
半値幅が狭いまたは前後比の値が大きいほど希望放送局以外の余計な電波を受けにくい

電力半値幅(度)が狭いほど、また前後比の値が大きいほど、希望放送局以外の余計な電波を受けにくくなります。
例えば、希望放送局(A中継局)からの電波をアンテナで受けたい場合、電力半値幅(度)が狭いほど、前後比の値が大きいほど、希望放送局以外(B中継局、C中継局)からの電波を受けにくくなります。

アンテナの選択について

アンテナ工事でのアンテナ選択方法

受信環境に応じた選択/受信電界強度による選択

設置場所が、強電界地区(8素子)か中電界(14素子)、弱電界地区(20素子)かで概ねのアンテナサイズが決まり、その他の要因を考慮して選択します。

受信周波数に合わせたアンテナの選択

UHF全チャンネル用アンテナは一般に受信周波数が高いほど利得も大きくなりますので、受信希望チャンネルが親局の受信の様に、13から34チャンネルぐらいまでならば、ローチャンネル用受信に特化した性能のアンテナも選択肢となります。

垂直偏波と水平偏波について

地上デジタル放送は水平偏波と垂直偏波の2種類の形態があり、地域によって使い分けられていますので、受信放送局に合わせて選択します。
八木式アンテナはアンテナを縦・横に取付け角度を変える事ができ、水平・垂直偏波のどちらにも対応できますが、薄型デザインアンテナは水平偏波専用と垂直偏波専用と別々のモデルが用意されています。水平偏波モデルを垂直偏波受信で用いると、横向きの設置となり見た目が変わりますので注意が必要です。

水平偏波と垂直偏波

家屋に合わせた選択

地上デジタル放送用のアンテナ及びBS/CSアンテナには、色のバリエーションも揃えられています。最近はアンテナだけでなく、屋根馬やサイドベース、マストポールも黒仕様の製品が一部のメーカーで用意されており、家屋に合わせた設定が可能です。また、片流れ屋根や太陽光パネルなどで壁面しか設置場所が無い場合でも取付可能なアンテナ(片ステー八木式、薄型アンテナなど)があり、選択肢が広がりました。

設置地域に応じた選択(積雪地区、塩害地域でのアンテナ)

八木式アンテナはエレメントに雪が積もると周波数特性が低い周波数にずれ、ひどくなると受信不可能になります。
降雪地区では、雪が吹き込まない軒下にアンテナ設置するなど工事上での対策も可能ですが、雪が積もっても受信性能があまり劣化しないアンテナもありますので、積雪地区でもアンテナ設置の選択肢が増えました。(これらは八木式アンテナではなく電波を受信する開口面積部に雪の影響を受けない構造となっています)
また、塩害地区へは、エレメントをステンレス素材とした八木式アンテナや、樹脂ケースで覆われたアンテナもありますので、選択下さい。

積雪地区のアンテナ

DXアンテナカタログ、マスプロ電工カタログより引用

アンテナ設置場所と工事のご注意

お客様向けの工事上の注意

高所作業となりますので安全上のご注意は当然ですが、ここでは技術的な施工の注意点を記載させていただきます。

設置場所について

送信所に向けて建物などに遮蔽されず見通しの良い場所を選択下さい。アンテナは送信所へ向けてしっかりと固定できる所とし、レベルチェッカーやテレビの受信数値などを参考にアンテナ方向を電波到来方向のピークに合わせて下さい。

ハイトパターンについて

アンテナは高さによって受信レベルが規則的に変化(ハイトパターン)します。また受信周波数によってもこの変化の度合いが変わりますので、各チャンネルの受信レベルがなるべく均一に揃い、かつ最大となる高さに設置下さい。高い所が必ずしも一番良い場所とは限りません。
地デジの受信要件は、アンテナ出力:49dBµV、CN比25dB以上です。出来る限りこの条件を満たす設置を目指して下さい。

ハイトパターンの図

1本のマストに複数のアンテナを設置する時や近傍のテレビ用アンテナとの離隔距離について

アンテナの相互干渉を防ぐため、水平偏波の地デジアンテナの場合は60cm、垂直偏波の場合は1.8mの距離を確保ください。

他の通信用(送信)アンテナとの離隔距離

戸建住宅では障害になる事は少ないかも知れませんが、携帯電話の基地局アンテナや衛星電話アンテナ、BWA無線アンテナなどの近傍にテレビアンテナを設置する場合は、なるべくこれらの送信アンテナと距離を置くように施工ください。
どうしても電波の影響を受ける場合には、LTEフィルターの採用や、場合によってブースターを金属BOXに収容するなどの対策があります。